まだ私が短大生だった頃、持ち帰り専用のお寿司屋さんで働いていたときの話だ。その店は8時に閉店し、後片付けやゴミ捨てなどをするとだいたい店を出ることができるのが8時半くらいだった。だけどその店では8時閉店後の後片付けの時給がつかず、代わりに余ったお寿司が食べ放題だったので、みんなでワイワイしながら寿司を食べるのが、バイトの後の楽しみだった。その店はバイトも社員もみんな仲が良く、話は尽きることがなかった。本当ならば8時半には店を出なくてはいけないのだけど、だんだんそれも曖昧になり、結局10時、11時まで店にダラダラ居続けることも珍しくなくなっていた。するとその店が入っていたビルから苦情が来て、8時半までに電子キーでカギを閉めるように、という通達が来てしまったのだ。
さすがに正社員の人たちはまずいと思ったのか、その通達が来た次の日から、私たちバイトはきっかり8時半に帰されることになった。仕方ないね、と素直に納得できるほど大人でもなかった私たちアルバイトは、ある日正社員を言いくるめて8時半以降も居残ることにした。電子キーで鍵を閉め、中でひっそりとしていればバレないと思ったのである。電子キーで施錠し、しばらくの間私たちは息をひそめた。このまま何も起こらなければ、また寿司パーティができる――と思っていた私達は甘かった。ものの数分で、警備会社の人がすっ飛んできたのである。私達バイトは正社員の人を残して、蜘蛛の子を散らすように逃げて行った。
翌日、逃げたバイト達が全員集められた。滅多に来ることのない本社のマネージャーまで来ていて、ただ事ではなかった。そして悪い予感の通り、私たちはクビを宣告されてしまったのである。
まだ20歳前の若気の至りとは言え、痛い勉強になってしまったのだった。