私が通っていた短大はお嬢様学校だった。特に地方から推薦入学で上京してくる子たちは、その地方の名家出身のお嬢様であることが殆どだ。逆に関東近郊から通ってくるのは大概が私のような一般家庭の出身である。
満員電車とバスを乗り継いで這う這うの体でやっと学校に辿り着く私たち一般ピーポーと違い、お嬢様たちは学校の近くのマンションを借り、そこから優雅にお車通勤だ。「格差」という言葉を、私はこの学校に来てまさに体感したのである。
羨ましいなと思いつつも、やはりそこは一般ピーポー、お嬢様の生活に憧れるし興味はある。私はその学校で一人のお嬢様と仲良くなった。彼女ははるばる青森から一人上京し、一人暮らしにも関わらずマンションの最上階にある3LDKの“狭い”部屋に住んでいるそうな。地元に帰れば自宅から見える範囲のだいたいが彼女の家の土地、とのことで、そりゃあ3LDKなんて彼女からしたら納屋みたいなもんだろう。我が家は同じ3LDKのマンションに4人家族で慎ましく暮らしているのだが。
そんな彼女、最近車を買い替えたそうだ。彼女曰く、“安い車”だそうだが、彼女がそれとなくちらつかせるカギにはスリーポインテッドスターがキラキラと光っている。ほほぉ~、お外の車ですかぁ~。しかもおべんつですかぁ~。何でもない風を装っているけれど、内心では「ちくしょーっ!」である。どうして同じ日本に生まれてこうも境遇が違うのだろう。
スリーポインテッドスターのエンブレムを輝かせ、颯爽と帰っていく友人を見ながら、そういえば我が家の車のエンブレムにもスターがついていたな!スバルのスターがね!と密かに張り合ってみるのだった…。